過去と病熱
あの曲は嫌いだ。こんなに心臓が切り刻まれる歌はない。好きなことが嫌いなことになっていく。あの人のせいで。あの人と離れ離れになったせいで。こんな醜くて不透明で不甲斐ない感情を恋なんて呼びたくない。
私には隣にいてくれる人がいる。それでいい。それだけでいい。
そしたら、それ以外、なくなった。
友達も減った。会わなくなった。
脳が死んでいく。停止していく。腐って崩れていく。人間を全うできなくなる。
なるべくなるべく脳に負担がかからないように、過去を揺り戻さないように。
穏やかな今で、塗り重ねた。
夏が来る。死の季節。
最も大きな心が死ぬ季節。
希死念慮すら茹だるような死。
私はまた、夏が嫌いな私になった。
あの人がまだ、私から消えないせいで。
私はもう、あの人の中から消えているのかな。
そうだったらいいね。でも、少しだけ思い出してくれたら嬉しいかもしれない。どっちなんだろうね。どっちも苦しいや。
苦しいのはやだな。
不快感がゆるゆる煮立つから夏は嫌いだ。
夏が私を手緩く殺していく。